ダムの歴史・日本

【日本のダム】

日本では古くから稲作が行われ、そのために洪水の危険の多い低湿地に移り住みました。洪水を防ぐとともに、稲作に必要な水を確保するために、溜池などの水を貯める工夫をしてきました。

日本で最も古い溜池がどこかは厳密にはわからないようですが、大阪府の史跡・名勝に指定されている狭山池は、我が国最古の潅漑用のため池と言われることがあります。

「古事記」や「日本書紀」にも記述がみられ、古くは行基や重源(ちょうげん、1120~1206)により改修が行われ、江戸時代の初期には豊臣秀頼(1593~1616) の命を受けた片桐且元(かたぎりかつもと、1556~1615 )が大規模な改修工事を行うなど、多くの改修の記録が残されています。

狭山池では、ダム化への改修工事が行われました。この工事に先立ち、大阪狭山市在住の考古学者末永雅雄博士の提唱により、大阪府土木部の協力のもとに、狭山池調査事務所を設立して文化財の調査が進められました。

この調査により発掘された東樋(ひがしひ)の木製樋管(コウヤマキ)について、年輪年代測定法により伐採年代を測定したところ、616年との結果が得られました。これによって、狭山池の築造は7世紀前半とする説が、現在有力であるようです。(→日本のダム:狭山池(再))

 満濃池(香川県)も古い溜池として有名です。満濃池は、大宝年間(701~703)に讃岐の国守道守朝臣が金倉川沿いの谷地の湧き水をせき止めて造ったといわれており、地元満濃町のホームページなど各種の資料にこの趣旨の記述が見られます。

満濃町では、2001年は満濃池の築堤から数えて1300年となるとして、2001年の4月からほぼ3年にわたって「満濃池築堤1300年祭」が開催されました。
 
以降も日本各地で多数の溜池が作られましたが、近代技術を使った本格的なダムと呼べるものは、明治になってからのことで、まず水道用のダムが建設され、次いで発電用のダムが建設されるようになりました。
 
日本初の水道用のダムは、長崎市の本河内高部ダムです。明治24年に完成した堤高18.6mのゾーン型アースダムでした。水道の計画・設計には、当時のイギリスの水道計画・ダム貯水池計画の技術が導入されており、その後の多くの年の水道計画の礎となりました。

このダムは現在再開発が進められていますが、今後も引き続き水道用として使われる計画です。(→日本のダム:本河内高部(再))
 
日本最初のコンクリートダムも水道用のダムで、神戸市の布引五本松ダムです。布引五本松ダムは水道用の重力式コンクリートダムで、明治33年に完成しました。

英国人ウィリアム・バルトンの指導、設計は大阪市から招へいされた技師・佐野藤次郎です。阪神・淡路大震災にも耐え、改修を経て現在でも神戸市の水源として使用されています。(→日本のダム:布引五本松(元))

日本最初の発電用コンクリートダムは、栃木県の黒部ダムだと言われています。大正元年竣工の石張りのコンクリートダムで、その後改修されていますが、現在も発電に使われています。(→日本のダム:布引五本松(元))
 
大野ダム(山梨県)は、台帳整地を形成する発電用アースダムで、大正3年竣工、堤高37.3mは当時日本一高いアースダムでした。(→日本のダム:大野)
 
大正の後期には、長距離送電ができるようになり、中部山岳地帯で大規模に水力開発を行って、それを大都市地域に送電することが可能となりました。このため、大正末期から大容量水力発電が活発となりました。

代表は、大井ダムを有した大井発電所でした。大井ダムは木曽川本川を締め切る堤高53.4mの重力式コンクリートダムで、「日本初の高さ50mを超えるダム」ともいわれる。(→日本のダム:大井)
 
昭和5年に完成した小牧ダム(富山県)は、当時東洋一のダムと言われた堤高79mの重力式コンクリートダムで、今日のような機械化施工技術で建設された最初の重力式コンクリートダムとも言われます。(→日本のダム:黒部)
 
このように、コンクリートダムとしては、まず重力式コンクリートダムが造られましたが、次いで、アーチ構造を利用して堤体積を大幅に少なくすることができるアーチダムが建設されるようになりました。
 
日本で初めてのアーチダムは、三成ダム(島根県)です。三成ダムは、昭和29年3月竣工の発電用ダムです。堤高が36m、堤頂長109.7mと小規模ですが、アーチダムの先駆けとなりました。(→日本のダム:三成)
 
本格的なアーチダムとしては、上椎葉ダム(宮崎県)があげられます。難工事を克服して昭和31年に竣工した堤高110mの大規模ダムです。(→日本のダム:上椎葉)
 
その後、日本経済の高度成長によって、労働賃金が上昇したため、経済性の観点から、投入労働力が少なく機械化の度合いの高い施工方法が求められるようになり、ロックフィルダムが建設されるようになりました。

初期の頃の代表的なロックフィルダムとしては、御母衣ダム(岐阜県)があります。堤高131mの大規模ロックフィルダムで、機械化施工を駆使して建設されました。
(→日本のダム:御母衣)


同じカテゴリー(ダムについて)の記事
ダムの種類
ダムの種類(2006-10-11 19:19)

ダムの歴史・世界
ダムの歴史・世界(2006-10-11 19:01)

ダムの語源
ダムの語源(2006-10-11 18:54)

「ダム」という言葉
「ダム」という言葉(2006-10-11 18:22)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

写真一覧をみる

削除
ダムの歴史・日本
    コメント(0)