中田島海岸に離岸堤3基 浸食防止解決には至らず
遠州灘沿岸侵食対策検討委員会(委員長・宇多高明土木研究センター理事)の第七回会合が二十日、浜松市内で開かれ、緊急対策として遠州灘の中田島(篠原)海岸に離岸堤を三基設ける案を採択した。県は二〇〇七年度に着工する方針。しかし採択案でも海岸後退を止めるには至らず、天竜川上流の佐久間ダムからの土砂供給頼みの状況は変わらない。
離岸堤は、海岸から五十-百メートルの距離に五百メートル間隔で三カ所設置。それぞれ長さ百メートル、幅十メートルに消波ブロックを積み上げる方式で、総工費は計画段階で十一億五千万円。年間五万立方メートルの砂を外部から中田島海岸に持ち込む「養浜」と併せ、砂浜の浸食を抑制する考えだ。事前にアカウミガメ産卵などへの影響を検証する。
県は防災上、砂浜の最低ラインを幅三十メートルに設定している。今回の離岸堤のシミュレーションだと、設置後十年間は最低ラインを確保できるが、それ以後は養浜の量を二倍に増やした場合でも、同ラインは十年程度しか維持できないという。
離岸堤案とともに、突堤、海底に沈める人工リーフの二案も議論対象となったが、宇多委員長は「五島海岸、竜洋海岸に計二十七基があり、比較すれば実績のある離岸堤が最良」と強調。その一方で「離岸堤にしても、ダム再編の進ちょくでダムからの土砂供給が成就するまで、課題を先延ばしするための措置にすぎない」と説明した。県は「ダムの土砂については、国と連絡会を設ける方向で議論している」とするが、実現の見通しは立っていない。
傍聴した約三十人からは「津波などの防災上、心配だ」「ダムの土砂供給が前提となっているが、本当に可能なのか」と不安の声も上がった。
御前崎市など遠州灘東部の対策、愛知県との連携など、長期的ビジョンの必要性も問われており、検討委は当面、継続する予定。
県によると、佐久間ダムの土砂せき止めで海への土砂の供給量が減ったことなどから、中田島海岸の浸食が進み、海岸線はここ三十年間で約百八十メートル後退。最近は年間五メートルのペースで浸食が続いている。 (西山和宏)
中日新聞 9月21日