天竜川・環境ツアー 進む海岸浸食に危機感
浸食が進む海岸と土砂で埋まる巨大ダム--。ゼミの仲間らと8月上旬、天竜川をさかのぼり、住民や関係者から話を聞いた。このスタディーツアー「遠州灘の砂丘が消える」で川は水を流すだけでなく、海岸線の保全や魚などの生態系保持にも大きな役割を果たしていることを知った。
天竜川は諏訪湖(長野県)を源とし伊那谷を南下、静岡県浜松市で太平洋に注ぐ。延長213キロ。ツアーは「日本環境ジャーナリストの会」が主催、ゼミの講師・保屋野初子さんが案内を頼まれた縁で参加した。
まずJR浜松駅から車で20分の中田島砂丘を見学。日本3大砂丘の一つとされる中田島砂丘だが、予想していた砂丘の姿はなく、幅広い砂浜が広がっているだけ。砂丘の入り口で「海岸侵食災害より住民を守る会」の鈴木利幸代表が立ち止まった。「海が見えるでしょう。以前は砂丘で見えなかった。13個の大きな砂丘があり、サンドスキーも楽しめた」
海岸の浸食が急速に進んだのは最近になって。200メートルも海岸線が後退、3年前には埋め立てられていた大量のゴミが流出、問題になった。浸食が進めば、砂浜は姿を消し、高潮や津波が住民の生活を脅かしかねない。
◇ダムが土砂の供給ストップ
保屋野講師によると、海岸浸食の原因として考えられるのがダム。ぜい弱な地質の中央構造線に沿って流れる天竜川は大量の土砂を遠州灘に運んできた。その土砂がダムでせき止められ、海岸に砂が供給されなくなったのだ。流域最大の佐久間ダムが完成したのは1956年。何十年かは川底や海底にたまっていた土砂がカバーしていたが、ストックが底をつき急激に海岸浸食が進行しているとみられる。
天竜川をバスでさかのぼり佐久間ダムに到着した。大きい。1年間に約14億キロワット時を発電、水力発電として日本一を誇る。
50年間でたまった土砂は1億1720万立方メートルで総貯水容量の3分の1以上の36%に達する。ここ10年の平均年間流入量は約130万立方メートル、うち約40万立方メートルがしゅんせつされている。湖内移動などの対策も取られているが、将来的に発電への影響も懸念される。
天竜川漁協の秋山雄司組合長にも話を聞いた。ダムの濁水に含まれる細かな泥で(エサの)コケが覆われるほか、エラに付着すると呼吸ができなくなり、アユの生育が妨げられているという。
ダムによって土砂が止められ、砂浜がやせ細る現象は、全国各地の砂浜で起きている。治水や発電などダムのプラス面は評価しつつ、環境への悪影響にも目を向けなくてはならないと感じた。【明治学院大・己上裕貴、岩橋大悟、岡島淳】
毎日新聞 2006年8月25日 東京夕刊
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